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朝の住宅街を歩いていく。
土曜の朝は人もまばらで、時折散歩する人とすれ違う程度だった。
始発が丁度動き出したようだ。遠くで、カタンコトン音がしていた。
薄いオレンジ色の光が、まだ完全に目覚めていない住宅街を照らしていた。
希望も悲しみも、全部抱えたまま。どんな時でも、朝はくる。
まだまっさらな朝も、だんだん変わって終わっていく。
瑞月は、なぜかふと、朝の風景に心許なさを感じていた。
いつもの朝だ。
母さんがいて、あたしがいる。
それでいいじゃないか。
瑞月は、心の中のよくわからない不安を消そうと、歩く速度をはやめた。
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