平和への一歩

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「行くぞ」 想像以上に絶妙で美味しかった梨りんごをバックへしまい、大和はガムを一つかんだ。 そして箱を慶へ向けると、「大丈夫」とだけ返される。 2人は足を進ませ、自動ドアを通った。 中は広く、暖房が効いている。それも効き過ぎず、適温を保っていた。 ロビーのような空間の先には、所謂受付嬢が2人ほど座っていた。 「じゃぁ行こうよ」 少し緊張に体を強張らせては居るが、それでも足を進ませようとする慶を今度は大和が止めた。 「待て。普通に行っても1000%帰らされる」 「それじゃどうやって…」 「社員を探すんだ。社員に話せば多分確率的には50%にはなる」 STARSの珍しい所はN・Wの社員や運営チーム、開発チームが皆STARSのプレイヤーである事だ。 勿論、忙しい身である為にログインしている時間は限られるし、社員だからといって何か優遇される訳でもない。 一般プレイヤーとしてSTARSを第三者的視点から見る事で、問題点等を見出す。 『社員である事を口外しない』という事を筆頭に、様々なルールが設けられているらしいが、とにかく社員は皆プレイヤーでもあるのだ。 「こういう時くらい知名度を利用しないでどうする」 なるほど、とこれには慶も頷いた。 プレイヤーであるという事は当然ギルドバトルにも参加していた。 大和達の話は知っているだろうし、そうとなればまだ希望の光は閉ざされてはいない。 しかし10分、20分と待てど、なかなか社員と思われる人物は現れなかった。 ロビーに用意された椅子に腰をかけ、少し落ち着かない慶の様子はなんとも不審そのものであり、それは恐らく受付嬢にも伝わっただろう。 その時、エレベーターが鳴ると、ドアが開いた。 中から数人の男性が出てくると、受付嬢に気軽な挨拶を交わしていた。 受付嬢の態度も少し親しい様子で、『社員』と考えられた。 「慶、来たぞ」 椅子を立ち、その男性達の前に立つ大和。
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