平和への一歩

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「ここの社員さんっすか?」 「あ、用があるなら彼女等を通してもらえる?」 こっちが高校生であるとすぐに判断した男性のうちの1人が、少し気さくに言った。 そして大和を通り過ぎようとする。 「溝端大和。クロノスのギルドリーダー、大和。んでこっちは慶。少しいいっすか?」 大和の言い方が威圧的すぎて、高校生らしい敬語すらもあまり意味を成していない。 しかし大和の言ったとおり、男性は少し驚いた表情で足を止めた。 「あの『紅天』の大和か?驚いた、まさか高校生だとは…。いや、さっきは失礼。君もログアウト障害の件で訪ねたのかい?」 「まぁ、そうとも言えます。とにかく、開発チーム又は運営チームの責任者に会わせて欲しい」 「ちょっと待て。君が大和君だと証明できるものはないじゃないか。もし、2人が本物であるなら責任者を出そう」 先ほどの気さくな男とは違う、まだ若い男が少し声を張り上げた。 「やめろみっともない!!お前は黙ってろ」 今度はまた違う、年配の男が若い男を叩く。 「部下が失礼した。実は私たちも今、最高責任者をお迎えにあがる所でね、もう少しで見えると思うんだけど・・・」 「最高責任者?社長って事でしょうか?」 暫くやり取りを見ていた慶が訪ねる。 「いや、社長は海外の仕事が多くてね。日本には滅多に居ないんだ。だからこの本社の責任者は最高責任者って呼ばれてて、日本の社長みたいな所かな。実際あの方は開発、運営両方の責任者を兼任していてね。不足はないはずだよ」 大和は、どちらかの責任者と話せれば運が良いと考えていたが、まさかこういう形になるとは思わなかった。 しかしこれは願ったり叶ったりである。 「じゃぁ、待ってます。もうすぐ来るんですよね?」 ちょうどその時だった。 車が近づく音が聞こえる。 次第に大きくなるエンジン音が、すぐ近くで止まった。 まさに、正面入り口の目の前で。
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