平和への一歩

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「お疲れ様でした。藤川副社長」 一斉に頭を下げる男性につられ、慶も、大和も軽く頭を下げた。 ≪副社長ならそう言えよ…≫ と内心呟きながら顔を上げると、そこにはまだ20代後半か30代前半程の若い女性が立ち、その両脇に年老いた男性が2人、若く逞しい男性が2人立っている。 「ご苦労様。その子達は?」 上から物を言う、威圧的な口調は慶の身近な存在と良く似ていた。 「いや、その…。溝端大和と小林慶と言いまして、STARSで…」 「もう、電話も鳴りっぱなしで私だって忙しいのよ。あなたたち、高校生を追い返す事も出来ないの?障害や規制に関する説明はホームページのみだって言ったでしょ?何やってるのよ」 あの気さくな男性が問答無用に叱られているのを見ていて、大和達もいい気はしなかった。 自分たちが原因であるのだから。 「ごめんなさい。みっともない所をお見せしちゃったわね。お詫びはゲーム内で必ずするわ。とにかく、今は忙しくて手が離せないの。何かあったら公式サイトで報告するから、待っててもらえるかしら?」 藤川はパッと表情を変え、口調も優しいものになった。 『上司モード』から『営業モード』へ瞬時に切り替える藤川に、少し感心してしまう。 「悪いけど、説明を求めてここに来たんじゃない。俺をログインさせて欲しい」 「「「えぇっ!?」」」 気さくな男性、慶、藤川の声が重なる。 藤川は少し考えるような仕草をすると、煙草を一度吸い、煙を吐いた。 「こんなところじゃ悪いわ。VIPルームへお通しして」 スーツ姿の似合う老人に案内され、大和達はエレベーターを上がった。 そして向かった先には、VIPルームというだけはある。 かなり豪勢な品が揃う部屋があり、そこで藤川が来るのを待つ。 途中に、ジュースと洋菓子を持って来てくれた。 「お待たせしました」 先にもう一人の老人が入ってきて、頭を深く下げる。 その後から藤川が入ってきて、大和達の向かいの椅子に腰を下ろした。
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