平和への一歩

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「おかしいなぁ。大和、蓮から何か聞いてない?」 携帯電話を耳にあて、暫く待っていた慶だったが、蓮は一向に出なかった。 慶は電話を閉じると、その視線を大和へ向ける。 「特に何も。でも、なんか変だよな。」 中学を卒業後、3人は揃って私立燦浄高校へ入学した。 偏差値は大したものではなかったが、綺麗な校舎、設備のよさ、そして自由な校風が何よりも魅力だった。 それから3人は運よく同じクラスになり、3年間を共に過ごす新たなクラスメートも出来てから1年と少し。 これまで、遅刻はあっても休みはしなかった蓮が今日は来て居ない。 もう昼休みだというのに、だ。 それどころか、クラスの半数近くが、無断欠席になっているのだ。 聞けば他のクラスでも似たような状況らしい。 「大和も知らない、か・・・。でもこの状況でいつも通り授業が行われるのも凄い話だよね。」 学級閉鎖、最悪学校閉鎖さえ考えられる出席状況だが、授業は平常通り進んでいる。 「帰ったらとりあえずあいつん家行ってみるしかねぇな。」 溝端大和。 かつてSTARSというオンラインゲームで、『紅天』と恐れられた1人。 身長は平均程度か、若干高め位で、茶色に染めた髪や着崩した制服、耳に光るピアス、細い体つきと、まるで体全体で『高校生』を表現しているようだった。 頭の回転もよく、蓮や慶に何かと頼られている存在でもある。 そして大和の隣で蓮へメールを打つ、小柄な男は小林慶。 これまで学年1位の成績を守り抜いてきた程頭は良いが、運動は得意ではない。 典型的な頭脳派だ。 中学生と変わらないような身長、顔つきだが、彼もまた『紅天』と呼ばれた1人である。 そして今問題になっているのは杉山蓮。 蓮もまた小さく、慶と同じ位の身長しかない。 頭は非常に悪く、毎回赤点というのは当たり前だった。 彼も、かつて『紅天』と恐れられていたのだが、その私生活は見る影がないほど馬鹿馬鹿しいものだった。
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