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「このゲームは脳波信号を察知してキャラクターを動かすんです。だからゲーム内でも実際と変わらない感覚で動けるし、360°から情報を受け取れる。ゲーム世界の中に入り込める事がウリのオンラインゲームです。地震など災害や、緊急時には自動的にサーバーがダウンして強制ログアウトという措置がとられるんですが、それ以外の場合ではプレイヤーの意思でログアウトする以外方法がありません。」
淡々と進む慶の説明には、聞きなれない言葉も所々に混じっていた。
蓮の母親はなんとか理解し、飲み込むとある1つの疑問が浮かび上がる。
「じゃ、じゃぁ蓮は学校をすっぽかしてゲームしてるって事?」
「これ、今STARSで原因不明のログアウト障害が発生しているのが理由ですよ。蓮は向こうの世界に閉じ込められている状態です。」
2人のやりとりをよそに、ずっと携帯をいじっていた大和がその画面を蓮の母親へ見せながら言った。
これには慶も驚いたが、それなら全て合点がいく。
「・・・そ、それって・・・どうすればいいの?もう、このままなんて事に・・・・」
先ほど、一旦収まった涙が再び目を潤ませた。
しかし、2人には何故今更蓮がSTARSにログインしていたのかが分からなかった。
そして、ログイン障害なら度々あったがログアウト障害というのも初めて。
2人にとっても分からない事が多すぎた。
「とにかく、多分すぐにログアウト障害も直って、蓮もログアウトしてくると思います。辛いかもしれませんけど、あいつを待つ事しか出来ないんです」
その後、大和達は蓮の母親と別れを告げた。
母親は少し辛そうな、悲しそうな顔をしていたが、軽く笑顔を見せて見送ってくれた。
「どうしよ。多分皆同じ状況だよね」
STARSはその最先端かつ斬新なシステムが話題を呼び、今では日本人口の約半数がプレイしているというデータまである。
これはオンラインゲーム初の快挙とされ、これまでも多くの番組で取り上げられてきた。
これだけ大掛かりな事故にまで発展してしまったのも人気が故、という事だろうか。
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