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vol.1 連帯保証人
俺の、昔一緒に好きな女子の話をした親友、一緒にやんちゃをした親友、唯一無二の親友が、人を殺したらしい。
惨殺事件として、ニュースでも取り上げられて、俺の親友、「敷島世界(シキシマセカイ)」の名はあっという間に有名になった。
歴史に残る残酷事件の犯人として。
正直、初めてそれを聞いた時は、全く実感が沸かなかった。
勿論、俺の知っている敷島世界は、人を玩具のように弄び、殺すような人間ではない。
寧ろ、普段は調子付いてる癖して、虫を殺したりするのに、敏感に反応するような奴だった。
俺は今でも信じてないし、きっと敷島は何かの濡れ衣を着せられたんだと思う。
俺は、自分の親友を信じてるし、第一そんなのクールじゃねえ。
親友を疑う暇があるなら、新しい首相の名前でも覚えるね俺は。
「ー……熱い」
携帯が異常に熱い。
ヤバいかもしれない。携帯ないと困る俺。
「……やっぱ繋がんないよな」
敷島世界が行方不明になったとニュースを見た。敷島のこと、なんも知らねえようなケバいおばさんが、「怖いですねえ」とニュースを読み上げていた。
俺はおばさんの色褪せたスーツのが怖かったけど、ワンセグを中断して、敷島の携帯に電話をしてみた。
電子音が数回鳴って、留守番サービスセンターに強制的に繋がれた。
「あ、敷島か? 俺だけど、聞こえてたら、電話くれ」
残り数秒を残して、俺はメッセージを言い終える。
ー……あ
「俺は、お前を信じてるか」『プーッ』
「…………」
電子音に中断されてしまった。まあ、仕方ない。
多分敷島からの返事は無い。
自分のニュースがトップを飾ってる中で、「信じてる」なんていうのは逆効果だ。多分。
でも、今の俺にはそれしか言えなかった。
信じてる。嘘じゃない。
嘘は好きじゃない。
「だってそんなのクールじゃねえ」
俺は、自宅の冷えた扉を勢い良く開けた。
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