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質素な黒。黒以上の、黒は存在してはならない。そしてまた、黒は全てを吸い込んでしまう。しかし唯一、黒を屈服させてしまう白がいて、しかしこれは逆も言えよう。御互いが競うように、自分を刻む。勝つのはまた、どちらでも無いというのに。
桜田雅也は雪の舞い降りる初冬を思い、首元に巻いてある白いマフラーに顔を埋めた。
休日のせいなのか、雅也の歩く街はこの寒い時期にも関わらず沢山の人で賑わっている。雅也は、皆が皆娯楽の為にこの街を訪れた格好をしている中で、自分の端正ながらも質素な黒のロングコートは、少なからず場違いだと思った。
画材の調達という任務を終えた雅也には、もうこの街にいる理由は無いので、足早に駅への道を歩いていた。…と、突然見知らぬ女性達に声を掛けられる。
「あの…、」
「…はい、」
控えめな声に導かれて、後ろを振り向くと、そこには声とは裏腹な恰好をしたふしだらな女性が二人立っていた。
女性というのはとても不思議だ、と雅也は思った。この寒空の下で、膝まで来る長いブーツに、太股が余すことなく露出されたホットパンツ。
…ああ、想像しただけで…寒い!!
それをあえて顔には出さない。彼女達はそれで自分を魅せているのだ。嫌な顔をしてしまっては彼女達の立場が無い。
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