第二十一章

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      ハイヒールの気高く響く音が聞こえる。  女達の手を振りほどいて、好戦的に笑う顔に、雅也まで恐怖を覚えた。 「…誰ですか、」 「逆ナンしてたお前らに告げる名前なんて無い、」  突然現れた人物に、女達は気分をあからさまに害されたという表情を向けた。それをものともせずに鼻であしらい、更には皮肉まで添えて言葉を返すその人物の図太さと言ったらない。 「……はぁ……」  雅也は確認する様にその人物の顔を見て、そして盛大にため息を付く。雅也はこの人物を知っている。…彼女を知っている。 「お前らに雅也はやらない、不似合い、だ」  そういうや否や、彼女は雅也は引きずって歩きだす。 「雅也は私の恋人なんだから、」 「はぁ!?…何言ってン…」 「黙れ」  想像もしない言葉を言われ、雅也が不快そうに声を荒げると、その一言で一瞥されてしまった。全く、以前から彼女には敵わない。 「…you are my sweet angel.」 「気持ち悪い」  悪乗りした言葉さえも払い除けられ、雅也はただ彼女に引きずられる事にした。遠くから猿の様に声を荒げる、女達の声が聞こえる。      
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