世界

5/6
前へ
/6ページ
次へ
 幾らかの距離を放心状態で歩いていくと、僕の脚はみるみる疲れを無くしていった。何か、神聖さを通り過ぎたものが、自分の身の回りに起ころうとしている。僕は直感的に、そう思った。  妖精、という動物はこの世には存在しない。辻は小さい頃から(といっても今もなお高校生という名の子どもだが)そういった思想が根づいていた。御伽噺とは縁がない。現実にならぬものに縁なんて存在しない、というのが彼の思想だった。  しかし彼が見た光景は、妖精たちの集まりと言う他に呼び名が思いつかないものだった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加