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千葉の真ん中にあるビル。その四階のこの事務所は「置物事務所」とビル内の人間に称されている。
「何で置物なんだかさっぱりだな。いい仕事もしてるっつーのに」
諜報担当兼現場担当の中村がそうぼやいた。如何にも気怠そうなその口調は、奇しくも不快感を与えることがない。
「仕方ないさ。探偵業は裏でやってんだから。表向きは社内の庶務課ってことになってるわけだしな」
現場担当の佳神悠斗は中村にそう返事をした。しかし実際、悠斗にも不平が全く無い訳ではない。
このビルは、色んな仕事などを受ける会社…、端的に言えば便利屋である。例を言うならばゴーストライター、学習塾の講師、新米教師の指導者……等、挙げればキリが無い。探偵業だって例外ではない。表には仕事内容は知らされていないのだ。では、依頼はどこから舞い込むのか?答えは簡単。この事務所を知っているただ唯一無二の男が媒体となり、一般庶民から依頼を引き受けるという感じだ。この男については話すと長くなるので以降、閑話休題。
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