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「銀さん、何ボケッとしてんですか。魚焼けたんで準備手伝ってくださいよ」
すぐそばから聞こえた新八の声に肩が震えた。
未だ眠気に落ちそうな瞼のまま一緒にずり落ちそうになっていた下半身をソファーに戻し、卓を見るとすでに伏せられた茶碗が並べられていた。本当にらしくない。
のっそりと立ち上がり台所へ。味噌の香り立つおつけを椀に注ぎ、ほくほくと湯気を顔に被りながら食卓に運ぶ間も、思考はモヤモヤと気持ち悪い。
意味もなく生まれる感情がない交ぜにグルグルしているのがわかる。熱が有るのかもしれない。それで情緒が不安定になっているのか。
「神楽ちゃん全然起きませんよ。まったく、昨日ロードショー見てて夜更かししたみたいだし、先に食べて、って銀さん?」
「んあ?ああいや、そうだな、食っちまおうぜ」
「はい。あ、銀さん箸」
「おー」
面倒になってぼやけた思考すら放棄する。
三色の箸を並べ、食卓に着き茶碗に箸を付けようとして、ふと隣を見た。
半分空いたソファー、神楽が座る席だ。ぽっかりと空いた空間。
それは珍しいことでもなく、普段も食事の時間がずれ一人で座る場面は多々ある。
が、なんだろう、何もないそのスペースがやけに、
「・・・・寂しい」
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