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「え?」
「あ?」
口から意図せず洩れだした感情が抑えが効かなくなるほど膨れ上がってきて、事態を把握する間もなく、マズい、と思った時にはそれは流れ落ちていた。
「・・・・へ?ちょっ、銀さん!?泣い、ぇえ!?」
まだ何も口にしてない口内に塩辛い水が入り込む。
いい年した大人がみっともないと思う理性すら飲み込むほどの激情に戸惑うが、涙腺は壊れたように涙を垂れ流し続ける。
慌てふためく新八がいくら宥めようと止まらず、理由を聴こうがそりゃこっちが知りたい。
「ぎぎ銀さんおちっ、落ち着いてくだサイクロンンン!」
「お、お前が落ち着けよダメ、ガネ。・・・・つーかなんで若干、嬉しそうなっ、なんだよ」
「え、え、いやなんか、」
「うう・・・・、うっさいアルダメガネ、お前のせいで目ェ覚めちゃったヨ・・・・」
タイミングがいいのか悪いのか、騒がしい新八に起こされた神楽がずるずる襖を開き起きだしてきた。
勿論大の大人がボロボロ泣くところなんて見せたくはない。咄嗟に顔を伏せたが遅かった。
妙な寝癖をつけたまま、眠気も一気に吹っ飛んだような顔に驚愕を張り付け、しかし徐々に新八と似たような、喜びと困惑の混じった奇妙な表情を浮かべた。
「銀ちゃんどうしたネ!このダメガネに苛められたアルか!?よーしよしいい子いい子。悪いメガネはお母さんがとっちめてやるからネーよーしよし」
「うおっ、ちょ、撫でんな首折れる!頭もげるゥゥゥ!」
「あ、泣き止んだ」
「お母さんがいい子いい子したからヨ!」
神楽に触れられた途端、あれだけ溢れていた涙はピタリと止んでしまい、心に渦巻いていた悲しみも寂しさも風船のように萎んでいく。それでも残る不安に両手は自然に新八と神楽の手を握る。
しかし鬱々とした気分は晴れず、唐突に今朝見た夢のことやら、色んな嫌なことを思い出し、途端、衝動的に目の前の子供たちに縋りつきたくなった。
それを必死に堪えながら、しかし口は止まってくれなかった。
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