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「ただいま」
誰もいない部屋に入った。
電気をつけると、朝食べ残した弁当のにおいが鼻をついた。
「くさっ」
すぐにベランダの窓を開ける。
涼しい風が入ってきた。
最近は少し暖かい。
春の気配がする。
大学はもう二年目。
何の問題もなくやってこれたなんてうそでも言えなかったけれど、こうして親の声の届かない場所でのびのびと生活している。
大都会の真ん中にひっそりと佇むこのマンションの一室はほかの高層マンションなんかより全然安い。
けれど別に何ら支障はなかった。
女の一人暮らしなんか危ないとは思うけれど、暮らしてみれば別に毎日おびえた生活をしているわけじゃない。
友達は毎日のように訪ねてくるし、目の前にはいくつもの24時間の店が並んでいる。
眠りは浅くなるものの、安心には変えられないものがある。
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