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ツン、とした臭いが鼻につく。
宙をさ迷っていた手に緑の絵の具が付いた筆を渡す。
ありがとう?いえいえどういたしまして。
「あ、そーだ兄ちゃん」
「んー?」
「セラーさん、違ったよー。ベストセラーのセラーじゃなかった」
「そうなの?じゃあワインセラーのセラーとか?」
「それ前聞いたよー。でも違うって」
この子曰く、セラーのセラーは何かもっと長い名前の中の一部だったと思う。とのことだ。
ただそれが思い出せずに今、目下模索中らしい。俺も時折それに付き合う。
まぁ多分、この子の数ある暇潰しの一種だと思う。
「他は?何言ったんだっけ」
「えっとね、セーラー服!」
「……それは傑作だねぇ。俺もそれ言われたセラーを見てみたかったよ」
「えー兄ちゃんもいたよ!で、皆で爆笑してた!」
「え?そうだっけ?」
「んふふ。兄ちゃん聞いたことないような声だったよ?」
赤、青、白。
いろいろな絵の具が折り重なったキャンパスの上に躊躇いなくペタペタと塗られていく緑。
この子は絵を描くのが好きだ。
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