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彼女は目が見えない。レンズの向こうの大きくて綺麗な目には何も映っていない。 先天的なものではないらしいが物心着いた時、記憶がある時からはもう見えなかったらしいので彼女の中に色と言う色はない。 だから私達から見た眼鏡のフレームが赤だったとしても、彼女がそれを青だと思うならそれは青でその瞬間から赤ではなくなるし、もしかしたら彼女の中の青は私達の思う赤なのかもしれない。 もしそうなら彼女は何も間違ってはいないし、私がそれを指摘するのはただのお節介でしかないのだ。 「ねぇねぇ、セラーさんのセラーはベストセラーのセラーなの?」 「違うよ。ほら、夢宇が呼んでる。もう行かないと」 「もうちょっと待ってよー…え、駄目?駄目なの?うーんじゃあまたねセラーさん。今度こそ当てるから!」 にぃと笑って自分を待つ友達のもとへ向かう彼女に、今度は青いフレームの眼鏡を買ってきてあげようと思った。 by セラー
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