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目の前に高校の校舎がある。
俺の母校だ。
もうないはずのその学校は、しっかりと存在している。
なぜ……
もう俺がここを自主退学して十年になるはずだ。それからは一度もここに来ていない。来るつもりも予定もなかった。
それなのに、なぜか高校はあり、なぜか俺はここにいる。
ふと見ると、俺はどこか懐かしい、嫌気がさす制服を着ていた。そういえば、視点がわずかに低くなっている気がする。
俺はどうやら、高校生に無理矢理戻されたようだ。
すると、俺はここに再び通わなければならないのだろうか。嫌だな。
「おーい、君!」
そんなことを考えていると、懐かしい声がした。
「椿原先生、お久しぶりです」
「何言ってるんだ。お前とはまだ初対面だと思うが」
どうやら、向こうは俺のことを覚えていない、もしくはまだ知らないらしい。
「とにかく急げ。もうすぐ入学式が始まるってのに、何突っ立ってるんだ」
そう言って椿原は俺を引っ張っていく。引っ張られながら、俺は『今日は入学式なのか。面倒だな』とか、ぼーっと考えていた。
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