森の追憶

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トトが、ころころと左右に転がり続けている。 何が楽しいのか、指でつついてやればにこにこと顔をほころばせる。 そんなトトを見ながらふと考えた。 記憶を取り戻したら、トトはどうなるのか。 悲しい出来事があって記憶をなくしたといっていた。 つまりは消したい程、悲しくて辛い思いをしたのだろう。 それは、無理をしてでも思い出さなくてはいけないことなのだろうかと疑問が浮かぶ。 むしろ、このまま心の奥に封じ込めて、思い出させないようにしたほうがいいのではないか。 よくわからないが、忘れていたものを思い出すというのは、その場その時起きたことを追体験するということではないのか。 悲しみに押しつぶされたトトの姿を思い出す。 心無い人形。 今となってはあの頃が嘘のようにころころと表情をかえてみせるようになった。 もし、自身の過去にトトが耐えられなかったら。 また、あの頃に戻ってしまうのではないか。 それは。 なんとも嫌な想像だった。
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