花は告ぐ

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「男性の方は興味ないでしょうけど、花言葉ってご存知ですか?」 「花言葉...。あ、確かバラって、愛とかそれっぽい感じじゃなかったですかね...」 それくらいはマメ知識程度に知ってはいた。 「バラの花言葉って、花の色によっても違ってくるんですよ」 と店のオネーサンは丁寧に教えてくれる。 「赤は情熱的な愛。白は博愛。ピンクは上品さや気高さ。もちろん一概ではありませんが」 手元のバラをついと見る。 「黄色は?」 「これも色々言われていますが、有名なもので『嫉妬』『薄れゆく愛』。 つまり、『別れ』を暗示してます」 「別れ...ですか」 ぎくり、とした。 「ええ。送別会や卒業式に渡すことが多いんです。今は春ですしね」 「そっか。じゃあ別のものにします」 そそくさと逃げるようにしたのは、決してオネーサンの好意が疎ましかったからではない。 「バラがお好きなんですか?」 動揺しているところに問いかけられて焦った。 「は、ああ。いや。花ならなんでもいいみたいなんですけど、バラが好物らしくて」 「え?」 うっかり口を滑らせてしまったが、それでも店のオネーサンは優しい。 クスクスと笑って、花を見繕ってくれた。 結局花の選択はお任せすることにして、店内を不在なくウロつくことになり、やはりいたたまれない気持ちに陥った。 数分(体感はもっと長かったけれど)待ってできあがったブーケはとてもキレイなものだった。 もっといい表現があるかもしれないが、それ以外に表現を知らない。 濃い緑のブーケ。 全体を深緑の葉が主張していたが、葉の隙間を埋めるように、赤いバラと白いバラが絶妙なバランスで点在していた。 にこやかにオネーサンは教えてくれる。 「赤いバラと白いバラを一緒にして花束をつくると、別の花言葉になるんです」 『調和と和合』ずっと一緒にいるという意味だそうだ。 「へぇ。すごいですねぇ」 感心しながら、軽く感動を覚えた。 丁寧に礼を述べ、店をあとにした。
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