キミに届け

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「...お前は、バカだっ!」 ついに出た言葉がコレだった。 これには店主も驚き、トトは大きな目を更に大きく丸くした。 「オレが...『いてやってる』と思ってたのか」 「『仕方なく?』『傍にいてあげてる』って?」 腹立たしさと情けなさが、ない混ぜとなって胸を乱す。 「んな訳ねーだろ。この、バカ」 トトがきょとんと小首を傾げている。 「言っておくけどな。オレはいつだって自分勝手なヤツなんだ」 学校も代返を頼んでサボるし、バイトも二日酔いのせいで休んだこともある。 飲み会や友人との遊びを優先してきた。 いつだって、自分の楽しみが一番だった。 嫌なもんは嫌だし、頼まれたからって全部を引き受けるお人よしでもない。 「お前、オレが嫌々付き合ってやってるとでも思ってんのか?」 トトを真正面から見つめて問いかけた。 トトはじっと動かない。 「んな、遠慮するような奴と一緒に生活できるほど、オレ人間できちゃいねーよ。 世話してやんなきゃって責任感もねーし」 「まぁ、最初は...確かにそういう気持ちも少しはあったけど...」 「す、少しだからな、ほんのちょっとだよ」 最後は声を小さくしてトトと目を逸らしながら言った。 「でも、今は違うからな」 今度はちゃんと正面に捉える。 「花屋行くのすんげー恥ずかしくっても、花束もって電車乗ってちらちら見られるのも、嫌なことだけど、別に嫌じゃねーよ」 「お前といるの、嫌じゃねえから」 トトが、わかるようなわからないような表情をしている。 「つまりだな...」 がしがしと頭を掻く。 「オレは、すきでお前と一緒にいるの!オレが、いたいから一緒にいるんだよ」 一気に言葉に出すと、胸の奥のつかえが取れた気がした。 「わかったか!」 と、最後は照れ隠しにぶっきら棒に言葉を投げた。 こくこくとトトが何度も頭を縦に振ってうなずいている。 どこまでも、生真面目なヤツだ。 ふう、と大きく息を吐いた。 言うだけ言ってしまうと、なんて子供染みたことを...。と後悔と気恥ずかしさが込みあがってきた。 言いたいことの、どれだけがトトに伝わっただろう。 まっすぐにこちらの目を見てくるトトの頭をゆっくりとなでてやる。 「だからさ、『一緒にいてくれて』なんて、言うなよな...」 「こっちがさびしくなんだろーが...」 店主が言う。 「『だいすき。一緒にいることが嬉しい』と、いっておるよ」 end.
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