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目を開けると白。閉じると黒が世界を支配する。
何処まで見通しても、それは変わらない。
どちらにしても何が変わる訳でも無かった。
ただ、どちらかというと目を開けていた方の色のが好きで、目を閉じる方は少なかった。
――何も無いのなら、景色(いろ)は明るい方が良い。
「…何を視ている?」
何処からか、自分のとは違う音が聞こえた。
「その視線の先に、何が視える?」
低い音が再度問い掛ける。
白と、黒。
「……何を求めている?」
……何も無いものに、求めるも何もない。
「ならば、何かの存在を望むか?」
―――あるのだろうか、そんなもの。
「それは■■次第だが、もし望みがあるのなら、少なくともこの部屋(せかい)には無いのだろう。あるとすれば、それは此処ではない何処かだ」
段々と音が近くなり、影が視界に入るのが判った。
「欲しいという願望があるのなら、出ればいいだけの事。欲しい物が不明ならば、まずそれを解明すればいい。それが普通。生きる者の一般的思考と理(ことわり)だ。それが無いという事は、お前もその『無い』に等しい存在なだけ」
大分近くなり全体が見えるようになる程になったが、霞がかっているようで形しか読めない。
私はソレに、真っ直ぐと目を向けた。
「人外であるお前に、その望みはあるか」
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