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日本で言うところ "紅葉”の季節がやって来た。
葉が紅く色づく。
季節を重んじる日本の文化は
言葉も美しい。
俺ら三人は、いつものようにリビングで机を囲んでいた。
俺が口を開く。
「ルナ・バーバラについて、
報告してくれ。」
シェリーは立ち上がり、紙を俺達に配った。
「では、報告します。
ルナ・バーバラ。34歳。
5年前に旦那さんを亡くしてらして、未亡人になったまま再婚せず、
イギリス郊外の大きな屋敷に一人で生活中。
ルナ・バーバラの父親は、
考古学では有名な学者として知られ、
数々の功績を残して来たわ。
今はアメリカで研究のため行ってる。
母親は、幼い頃に亡くしているようね。
元々、身体が弱かったみたいで、ルナを産んだことさえ
奇跡だったそうよ。
で、最愛の人を二人も亡くしたルナは、
5年前から、神経衰弱で精神科に通院中。
みたいな?」
「そうか。なんかかわいそうな人だな…。
指輪を盗んだとは思えない。」
心優しいハチは言った。
シェリーはそれを聞いてにやっと笑い、
読んでいた紙を破った。
「おい、なにしてんだよ!」
ハチが声を荒げて言う。
「まったく。
ルナ・バーバラは面白い人よね。
普通の興信所や情報屋だったら、
軽く騙されてるわよ。
この情報、よくできてたわ。」
シェリーは俺の方をちらっと見た。
見透かすような目で。
どこまで感づいてるのやら。
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