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会議が行われた夜、 リビングにはハチとシェリーがいた。 「ねぇ、ハチ。 私がいない13年間何があったの?」 シェリーがハチに尋ねた。 シェリーは生まれてすぐ孤児院の前に捨てられた。 だから、国籍も名前もわからない。 自称フランス人なのはそのためだ。 そして彼女は誰よりも努力家で、じぃやが与えるミッションをこなし、 陰ながら勉強をしていた。 学校では常に上位を争い、運動神経も抜群、何に対しても手を抜くことはしなかった。 そのかいあってか、12歳の時に 貿易会社の社長の養子となった。 それから仕事の都合で13年間、シェリーは世界各地を回っていたのだ。 たまに孤児院に顔を出してくれたが、 13年間のジェイ、ハチのことは何も知らないのだ。 「良くも悪くも何も無かったよ。」 ハチは答えた。 「私に隠し事? ハチ…あなたも私に嘘をつくようになったのね。」 「ガキの頃とはもう違うさ。 真実を言うには、複雑に様々な自分が絡み合って、昔みたいに簡単じゃないよ。」 「なるほど。おもしろいこと言うのね。 でも、ジェイはこのことをなんとも思ってないんじゃない? 私とのゲームだと思ってるわよ。」 ハチは黙った。 今夜は三日月に近い形をした月が窓から覗いている。 白ワインが入ったグラスがその月明かりを映し、綺麗に光る。 ハチはそっとグラスを持ち、口に運んだ。 「ジェイはいつだってそうだよ。 自分が追い詰められることで、楽しんでいるんだ。 ミッションでも、わざと自分が危険に晒されるようにする。 そうやって、楽しんでる。 あいつの性分だから。 だから…」 「例え、今回ジェイにとって深刻な真実が隠されていようと、 彼は楽しむと? 性分だから、余計そそられる?」 ハチは黙って頷いた。 「ふ……。 それじゃあ、とんだド変態じゃないの。」 シェリーの笑い声が響く。 「でも、それがあいつの弱いとこだよ。」
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