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「自分の気持ちを素直に受け止めれない。
……今はいい。
でも、いつかあいつは壊れるかもな。」
ハチは立ち上がり、冷蔵庫に向かった。
そして、ビールを取り出す。
「待ってエイト。
ねぇ、ムーン・ローズでも………
飲まない?」
「……え?」
ガタン
ハチは思わずビールを落とした。
「ふふ。
やっぱりハチは素直ね。
さっきは言わなかったけど、
私、知ってるのよ。」
シェリーは落としたビールを拾いあげ、冷蔵庫に戻した。
戸棚からハバナクラブやローズシロップを取り出していく。
「私、あんまりカクテルって好きじゃないの。
こういった甘いのはね。
第一作るの手間じゃない。ジェイは凝り性だから、カクテル作るの好きみたいだけど。」
そういいながら、手慣れた感じでシェイカーどんどん入れていく。最後に氷を3~4個入れてシェイクし、ロックグラスに注いだ。
バラの甘い香りがカクテルから醸し出される。
「いい香りだ。
俺は甘いカクテルも好きだな。
確かにシャム・ロックは、ミントが爽やかに香り、どこか気取ってるもんな。
ジェイはお前にぴったりの名前を付けたよ。」
「嫌な言い方ね。
どうせ私は甘い女じゃないわよ。」
シェリーはもうひとつカクテルを作り始めた。
「ねぇ、エイト……いつから、あなたの名前は"ハチ"になったの?
ねぇ、あいつに不釣り合いな名前を誰が付けたの?
あなたの名前はエイト。
あいつの名前はジャック。
私がいなくなる前は名前しか無かったのに。
不思議よね。
帰ってきたら私にもコード・ネームをつけてくれるんだもん。」
カタン
カクテル・グラスに真っ赤な液体が注ぎ込まれる。
「ジャック・ローズ」
ローズと名前が付いていても、ムーン・ローズのように、バラの香りはしない。
中身はグレナディンシロップで赤く染まったアップルブランデー。
「ジェイにはぴったりの名前だよ。」
そういって、ハチは手を伸ばしカクテルを口にした。
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