煙草

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「じゃあ、次のターゲットはダイヤモンドね。」 胸まである金色の髪をかき上げながら女は言った。 目が大きく彫りが深い、思わず見とれてしまう顔立ちに、スレンダーの身体には不釣り合いなほどの大きな胸。 コード・ネーム=シャム・ロック。 自称フランス人でみんなからはシェリーと呼ばれている。 性格は見た目同様、女王気質で気が強い。 「ダイヤ? お前の好みで言うと スメソニアに展示されている シュタインメッツ・ピンクあたりか。 ビビッドピンクで鮮やかなそれはお前がいかにも好きそうだ。」 そう発言をした男はやれやれと言いながら、肘をついた。 それによって逞しく筋肉が付いた腕が強調される。 彼はコード・ネーム=ワード・エイト。 エイト(Eight)は日本語で "はち”と言うので みんな彼をハチと呼ぶ。 赤みが強い髪色に鋭い目、190センチ近くある身長でかなり圧倒される。 「違うわよ。 眺めとくだけの宝石なんか興味ないわ。 身につけてこそ、宝石は私の一部となって輝くの。 だから、欲しいのは宝石じゃなくて、ダイヤの指輪。 この間、コ・イ・ヌールの指輪を見つけたの。 世界最大のダイヤ、コ・イ・ヌールをヴィクトリア女王に献上した際に、指輪にしたものよ。 その後、ボストン塔に展示されていたのに、 7年前、突如消えてしまった。 警察が捜査したものの行方わからず。 結局、 "光のように消えた指輪”と人々から言われた幻の指輪。 どう?素敵じゃない」 シェリーは誇らしげな顔をしながら、バッグから煙草を取り出してくわえた。 .
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