煙草

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ハチは少し驚いた様子でシェリーに尋ねた。 「その指輪どこで見つけたんだ? 光のように消えたはずだろ?」 うろたえるハチの様子に満足したようで、シェリーはくわえた煙草を戻し答えた。 「この間の潜入捜査で "婦人の茶会”に参加したの。 その中にとても宝石について詳しい御婦人がいらして、 色々話が弾んだわ。 で、その時、御婦人が私に指輪を見せてくださったの。 ピンクに光るダイヤ、その輝き、透明度、カット、ホントに素敵で 見とれてるうちに、気づいちゃった。 それは消えたコ・イ・ヌールの指輪だと。 御婦人の名前はルナ・バーバラ。 純真無垢と言う言葉がピッタリの素敵な御婦人だったわ。 そんな御婦人がなぜその指輪を持っているのか経緯は知らないけど、あれは本物だった。」 シェリーは再び、煙草をくわえ火を点けた。 そして、一息、口から煙を吐く。 「なんの根拠もないがな。 俺は指輪に興味ない。 丸っきりお前の趣味だし そんなんに付き合わされたくない。」 ハチはぶっきらぼうに言った。 「ちょっと、私の目を疑うの? それにこの間のワイン収集はあんたの趣味じゃない。 私、付き合ってあげたよね。」 「ワインはみんなも飲んだろ? 俺だけのためじゃなかった。 でも、指輪はお前のためだけだ。」 この2人はお互いの意見をあまり聞き入れない性質で 似た者同士である故に こう言った話し合いで必ず喧嘩をする。 「みんなにだってちゃんと見せてあげるわよ。 着けるのは私だけど。」 「ふざけんなよ。 結局、お前しかいいことないじゃん。 なぁ、そう思うだろジェイ。 お前も嫌だろ?」 急に俺に振ってきた。 言い合いの果て、いつも俺に決断を委ねられる。
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