煙草

5/8
前へ
/37ページ
次へ
前回はワインを集めるため 世界を飛び回った。 やはり、美しく、芸術的価値のあるものを盗むのは、すごく楽しい。 俺ら三人は、その感覚や価値観がとても似ていて、 仕事で決められたメンバーだが、プライベートでもこうやって集まり、怪盗をやっている。 話が大分長くなってしまったが、 今は、仕事が終わり、しばらく時間があるので 次に盗むターゲットを話し合っていたのだ。 「ジェイ、本気で言ってんのか?」 ハチが机を叩いて怒鳴ってきた。 「本気だよ。 消えたコ・イ・ヌールの指輪。 そして、素敵な御婦人、ルナ・バーバラ。 こんな面白い条件で俺が断る理由もないと思うが。 それに知っているか? コ・イ・ヌールにはいわくがあって 男が持つと呪われるらしいんだ。 とても興味をそそられる。」 俺はハチの怒りを無視して、笑って答えた。ハチの顔が曇る。 「ほらね、ジェイは私の味方よ。 諦めなさいハチ。」 煙りを吐き出し、勝ち誇ったように言うシェリー。 「わかったよ、しかたない。 ジェイがその気なら協力する。」 「ハチ、ジェイありがとう。 っあ、アルザスでも飲まない? フランス、ドイツの二国間で生まれたアルザス。どうかしら?」 シェリーはこの間手に入れた、ワインを取り出した。 アルザスはフランス領土で生まれたが、ドイツ色の濃いワインだ。 フランスもののワインが好きなシェリーにとって、 それを選んだのはドイツ人のハチに対するお詫びの印のつもりだろう。 「しかたない。 飲んでやろう。」 ハチは笑って言った。 なんだかんだで小さい頃から一緒の俺らは仲が良い。 今までいろんな奴らと組まされたが たぶんハチ、シェリーは俺にとって一番心を許せるやつらで 一番、落ち着くやつらだ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加