委員長の追憶

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「桜がサクラを見てるって、なんかきれいだね」 「…は?」 アホすぎないか、この台詞。 なんだかいろいろとぶち壊してしまった気がする。 思ったことが自然と口から出てしまった。けれど、そこで初めて比嘉くんが顔を上げたのだ。 …後悔はしていない、はず。 「ひがくんはじめまして、そーやです」 染井さんの口調がうつってしまった。幼稚園児の自己紹介なみだ。 「ごめん間違えた、宗谷です。あれ間違ってないな」 「……」 「はうあーゆー?」 「……」 「ないすとみーちゅー」 「……」 ううん、と頭を抱えた俺はずっと外を眺めている比嘉くんにつられて同じ方向を見る。 あ、サクラだ。 思わず俺は口を開いてしまい、そして冒頭のアホな台詞へと話は戻る。 比嘉くんの切れ長の目にじっと見据えられる。 美形、ってやつだなコレは。 「なんかごめん」 「……」 「でもさっきのは本気です」 なぜか敬語になってしまったオレに、比嘉くんが……笑った。 「そうですか」 「そうですね」 眉間のしわが取れて、穏やかな顔になる。 笑った方が絶対にいいと思った。お前バカなの、なんて言葉は無視。 …あ、そういえば。 「染井さんのこと無視したの?」 「…そんなつもりはなかった」 また眉間にしわを寄せた。 困ったように顔をそらされる。 「うん」 「ふわふわした日本語で驚いた。女の子に話しかけられたのも初めて」 …なんだそれ、かわいい理由だな。 耐え切れず吹き出してしまった。 それはとある四月の出来事。 .
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