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第一章
彼女は、学園からの帰り道を歩いていた。
黒髪の清楚な乙女。
誰もがそう見るであろう彼女は、誰が見ても予測のつかないであろう“任務”をこなしていた。
今回の彼女の任務、それはある人物の護衛だった。
しかし、それは護衛の対象である本人にさえも言ってはいけないこと。
理由は分からない。
そう、彼女はそんなことどうでもいいのだ。
ただ伝えられた任務をこなすだけ。
その時。
風が吹いて、彼女の長い髪をかきあげた。
「やだ、目の中に砂が」
風に溶け込んでいた砂だろうか。それが彼女の目を覆った。
ーーそして風の先に見えるのは“彼”だった。
渡された書類の中で何度も見た彼の姿。
何を見つめるでもなく、ただそこに佇む彼。
「どうしてかしら、涙が止まらない」
薄い涙の膜からぼやけて、けれど確かに見える彼はーーー
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