一匹狼の一日

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琴葉のつくった朝ご飯をおいしくいただき、いってらっしゃいという言葉を尻目に家を出る。 今日はいつもより早く家を出てしまった。学校に着いてもやることないし。 寄り道でもしてこうか、と考えたけれど結局辞めた。 この時間なら多分、 少しだけ早足で学校に向かう。グラウンドからは部活の朝練か、叫ぶ声が聞こえる。 ガラッと扉を開いたオレは自分の席に座る。窓際の後ろから二番目。春の暖かい日差しが入ってきて、遅めに咲いたサクラが揺れていた。 やはり、というか教室には誰もいない。荷物だけ置いている奴らは部活に励んでいるのだろう。 …この席からは弓道場が見える。 やっぱり。 弓道場の中にあいつの姿があった。弓道部は一応運動部に入るが、ゆるい部活だ。 朝練なんてないはずなのに。 あいつの性格が表れている、なんて一人笑った。 まっすぐな黒い髪。暑いのか、襟足の長い髪は一つにまとめられていた。 すらりと長い身長に袴はよく似合っている。 整った柔らかい顔立ち。学校中の女が揃いも揃ってキャーキャー騒ぐのも分からないでもない。 チェッと小さく舌打ちをしてみた。 …そんなあいつをじっと見ていたけれど、あいつが気付くはずがない。 自嘲気味に口角を上げて、目線を前に移し机に突っ伏した。 一人の教室にサクラが舞った。 .
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