委員長の追憶③

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ふと目を細める。 その仕種が桜に似ていて。 「あなたがね、」 ゆっくりと言葉が紡がれる。 「……」 「桜のこと、大事そうな目で見ていたから。とても優しい顔で」 なぜかどきりと胸が音を立てた。 彼女の言葉が遠くなる。 「こんな子が桜の傍にいてくれたら、」 「ダメですよ」 桜母が驚いたように俺を見る。 「もし桜の彼女が俺みたいなのだったら友人として断固反対します」 「……」 「それに、」 一瞬の間に桜母はごくりと息を呑む。 「それを言うなら俺が彼氏ですよね」 真顔で何を言ってるんだ。 はは、と笑って流しちゃおうなんて甘かった。 「…あら、それこそ私は反対だけれど」 桜母の方が一枚上手だった。 「冗談です」 「私は本気です」 まじですか。 「おい春、勝手に部屋出て…てなんで母さん?」 リビングに足を踏み入れた桜はこてりと首を傾げた。 寝起きのせいか状況を理解できていないらしい。 俺と桜母を交互に見遣った桜は徐々に不機嫌そうな顔つきになっていく。 とろんとした目がじとりと細められたとき。 「おはよう、さくら」 ひらりと手を振ったら、ひそめた眉はそのままにため息をつかれた。 「…うざい」 「ひどい」 わざとらしく唇を尖らせる。 目元を和らげた桜にきもい、なんて呆れたように返された。 .
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