一匹狼の一日

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「あれ、次の時間移動教室じゃね?」 三谷が時計を見て焦ったように弁当を掻き込んだ。 「ありゃ。じゃあお菓子は持って帰ろー。って、サクくん早っ。もうご飯食べ終わったの?」 「ああ」 元々量も少ないしな。こいつらの食べる量が半端ないだけなのだ。 「もうっ、いつまで食べてんの!」 痺れを切らしたようにヒナが三谷を無理矢理立たせる。まだ半分以上残った弁当を名残惜しそうに見つめる三谷。 サクくん、行くよ!と三谷の片耳を掴んで引っ張るヒナ。どこぞのマンガか、本当にやる奴初めて見たぞ。 ため息をついたオレは、自分のとそしてあいつらの授業の用意を持って教室を出た。 他の教室はまだ喧騒に包まれていて。けれど教室から離れるとすぐに静まる。 なんだかこの空気が柔らかくて、少しだけ笑みを浮かべた。 東校舎と西校舎を繋ぐ渡り廊下。 オレはぼーっと外の景色を眺めていた。 「…なあ次の授業、当たるんだけど。委員長、ノート貸して」 向かいから歩いてくる二人組。 ずっと外を見ていたから気付かなかった。 そしてオレはその声に目を臥せる。 「相澤に貸すとロクなことねえもん。人のノートでパラパラマンガ作るし」 「ちょーウケてたくせに」 「うん、悔しいがあれは傑作だった」 「じゃあ貸して?」 「そんな困ってんなら隣の木下に借りれ」 「あいつバカだから。授業中にFBIとやらの女が主人公の学園ラブを書いてる」 …それは是非とも読んでみたい話だ。 勝手に耳に入ってくる話を聞きながらオレは早足で歩く。 早く通り過ぎるように。 .
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