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「そう、優しいのね、えっと……
まだ名前聞いていなかったわね
教えてくれる?」
そういえば近衛さんの名前は聞いたけど私の名前は言ってなかったっけ
「美羽です、星野美羽」
「美羽ちゃんね
覚えておくわ
というか、私死んでるのよね
死んだ後に人と知り合うのってどうなのかしら……」
確かにそれは私も気にはなっていた
死んだ後の記憶ってどうなるんだろう
一晩したら忘れちゃう、なんてことあったりして
そうしたら、私のことは一日で忘れちゃうわけで……
そう思うと胸が苦しくて
どうしてこんなに胸が苦しいの……?
駄目、このまま考えてたらどうにかなっちゃいそう……
話を変えて思考を変えなきゃ
「その近衛さ」
「梢でいいわ
というかそう呼んでほしい
それと敬語もなしね
私は死んでるんだからそういうのはなし」
近衛さん、いや、梢さんはそういって微笑む
でもみるからに年上っぽそうな人にタメ語だなんてなんか気が引けるな
私は15歳で梢さんは見た感じ20歳前半、かな?
でも本人がそう望んでるんだからそうした方がいいよね
「えっと、梢さん、でいいの?」
「さんはいらないけど、まぁいいわ
何かしら、美羽ちゃん」
「梢さんは、その成仏したいの?」
私がそう尋ねると梢さんは考えるように口元に手を当てる
それもそうか
死んだことにもさっき気付いたばかりなのに『成仏したいか』なんて質問、悩むにきまってるよね
「成仏、したいと言えばしたいわね
あまりこっちに残るのもあれだし」
そっか、成仏したいんだ
成仏するってことは二度と会えないんだよね
また胸が苦しくなってきた……
どうして、死後に会ったってことは会ってないってことと同じなのに……
私と梢さんは会ってないのに、どうして元に戻るってだけでこんなに胸が苦しいの……?
成仏することは梢さんにとって嬉しいことの筈なのに、私はそれを素直に喜べない
成仏できないってことは永遠にこの世を彷徨うってこと
それほど苦しいことはないよ
なのに私はそれを心のどこかで望んでる
私ってこんなに性格悪かったんだ
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