10人が本棚に入れています
本棚に追加
純子は高校受験をしなかった。
もちろん行けないわけではないが家族と話し合った結果だ。
私は二月のバレンタインの日に
彼女を見舞った。
東京では珍しく雪の降る日だった。
病室で
『純子、野球部さ、秋季大会でブロック優勝したから次は都大会だよ。見てほしいな』
『うん・・・見たい・・・誠の雄姿、見たいな・・・。』
『来いよ、家族にも伝えてあるから絶対来いよ』
『うん。行く。もう最後になるだろうし・・・見るの・・・』
『馬鹿言ってるなよ・・・甲子園まで連れていくって、あん時言ったじゃん。弱音吐くなよ』
『誠・・・強くなったね・・・私がいなくてももう大丈夫だね・・・』
『・・・・馬鹿言うな・・・』
私はボロボロと泣きながら純子を抱きしめた。
こんなに細かったっけ・・・
もうこの頃には純子の体重は35kgくらいだった。
強く抱けば折れそうなほど・・・
『純子・・・俺何もしてやれなくてごめん・・・。でも甲子園には連れて行きたいんだ。最初で最後の約束じゃん・・・。』
『うん・・・誠が甲子園で活躍する姿・・・見たい・・・絶対見たい・・・』
私が高校生になり甲子園に行くまで最短でも1年半はかかる事を分かっている。
だが、純子に希望を持たせてあげたい・・・そんな気持ちで・・・それだけの気持ちで・・・甲子園を口にした。
最初のコメントを投稿しよう!