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運命が変わったあの日、ぼくは駅のホームに立っていた。
早朝の、通学や通勤をする人たちでごった返した駅のホーム。
喧騒の中で行き交う人達はぼやけて見えて、まるでゼリーみたいだった。
もっとも、ぼくもその中の一人だったろうとは思うけど。
周りから見れば、明らかに浮いていただろう。
それは、ぼくが学生服に身を包んだ、いわゆる“有名私立中学校”とかいうのの生徒だったからだ。
別に自分から親に行きたいと言ったわけじゃない。
“遊んでる暇があったら勉強しろ”
“学歴がなきゃ、一生平社員のままだぞ”
それがお父さんの口癖だった。
いや、厳密に言えば口癖じゃあないんだろうけど、ぼくとお父さんの間にはそんな会話しかなかったのだ。
だから、行きたくもない遠い中学校に通わされたぼくは、そうやって毎朝一人で電車を待っていたのだ。
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