空から降る金の雨

2/6
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
その日は、学校から真っ直ぐ家に帰らず反対の方角にある森へ向かった。 森には虫が沢山いたからだ。 僕は誰よりも早くクワガタを捕まえたかった。 給食で出た蜂蜜で虫を集める仕掛けを作るつもりだった。 明日は学校が休みだから、早起きして昆虫採集に行ける。 ワクワクしながら木漏れ日の中を急いだ。 梅雨はもうすぐ終わるというのに森の奥は肌寒いほどだった。 僕は手頃な木を見つけた。この木なら、きっと沢山の虫が集まる筈だ。 去年、カブトムシやクワガタの集まる木の葉っぱの形を友達から教えてもらった僕は、自信たっぷりで、その木に近づいた。 ゴツゴツした幹に、小袋から搾り出した蜜を指先で塗りつける。 一生懸命に塗っていたら指は十本ともベタベタになってしまった。 「あーぁ」 僕はハンカチを持ってなかったので舌で舐めとろうと、親指を口に含んだ。 「あま……」 口の中に濃厚な癖のある甘味が広がった。 「いいなぁ。アタシにも頂戴」 背後から、可愛らしい声が聴こえた。 振り向くと、いつの間に現れたのか 僕より少し背の高い、水色の服をきた少女が立っていた。 「アタシにも舐めさせてよ」 初対面の少女に、いきなり大胆な要求をされて 僕は、すっかり面食らってしまった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!