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昼下がりの公園のベンチに深く腰をかけて…
分厚い雲がかかる冬の空にそっと視線を向ける。
「どうしよう…」
ぽつり呟いて、瞳を閉じた。
神山緋色
職業 カフェバー店員。
風邪だと思って行った病院で人生最大と言っていいほど衝撃的な事実を告げられた。
「そうだ夢だ。」
頬を強くつねる、
あまりにもの痛さに涙がにじむ。
夢じゃない…
現実なんだ。
「どうしよう…」
もう何度も呟いたセリフをまた、ため息とともに呟いた。
『もしかしたら…妊娠されてるかもしれませんね。
うちでは詳しい検査が出来ませんので、産婦人科に行かれて下さい。』
真面目な顔で淡々と告げられた事実に頭が真っ白になったのは、今から一時間ほど前の事。
環境ホルモンの乱れがなんだかで妊娠する男性が急増してるなんてニュースを、
他人事のように見ていた緋色は、まさか自分にそんな状況がふりかかってくるなんて夢にも思っていなかった。
はぁー
何度めになるか分からないため息をついて、
思い浮かべるのは…子供の父親であろう人物の姿。
恋人っていうわけじゃない。
ただの同居人である沢田紫月。
アパレルメーカーの会社社長の紫月とひょんな事で知り合って…その当時、ホームレス同然だった緋色は紫月の家に転がりこんで…今に至る。
「紫月の子だよな。間違いなく…。」
はぁー
もう一度深いため息をついてベンチの背もたれに身を預けた。
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