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目を開けると、見知らぬ部屋の中に居た。
どうやらリビングのようだ。
電話、テレビ、観葉植物、カレンダー。
黒を基調とした家具が置かれている。
少し奥にあるキッチンも見える。
生活用品はあるのに、生活感がまるで感じられない。
何故此処に居る?
何より…
「僕は誰だ?」
記憶喪失、記憶障害か?
いや、そんな筈はない。
だって僕は、
「目が覚めたか」
声の方を見ると、小柄な女性が僕へと歩いてきていた。
年は恐らく二十代だろう。
肩甲骨あたりまで伸びた暗い茶色の髪で、Tシャツにジーンズというラフな服装。
気だるそうに頭を掻いている。
嗚呼つまり、此処は女性の家なのか。
「雨でびしょ濡れだったのに起動出来るなんて、旧式も馬鹿に出来ないな」
女性が言った。
そう、僕はアンドロイドだ。
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