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『続いて、"Hi-AutoTracer"を起動』
相変わらずの事務的口調。だが、彼女の吐いた"Hi-AutoTracer"という言葉が嫌でも彼の背筋を震えさせ、ただでさえ低い体温を奪っていく。全身から発せられる拒絶。
「了解」
だが、いくら身体が拒絶したところで拒否権なんて無い。拒否権以前に、この身体の所有権自体が奪われている。
、接続準備を開始します』
「……ッ!」
全身に纏った物質が身体を拘束し始めた。首から下の身動きが一切取れなくなる。各関節部を固定するような生易しいものではなく、痛みを伴う拘束だ。
自分の物ではないと割り切った肉体の痛みを一手に引き受けるのは不愉快極まり無かった。屈辱だけが彼の心を染め上げる。
『規定圧迫ラインに到達、Hi-Auto Tracer、接続』
「ぅあ……!」
脊髄に電撃が走り、痛覚が麻痺する。脳味噌は掻き混ぜられ、屈辱と快感の境界線がぐちゃくちゃになる。身体は完全に意思を離れ、意思にそぐわぬ喘ぎが漏れた。
『そウ合セツ続れベル、4はチパーせンとヲトっパ。しシん経せツzoク二……』
最早、彼女が何を言っているかが認識出来ない。視界が歪み、文字が再び線の集まりになっていく。
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