隣の化学教師

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声は理事長室の入り口から真っ直ぐ進んだ、最奥のソファーに腹這いに寝そべった女性から発せられたものだった。 緋色のタイトなドレスを身に纏い長く艶やかな黒髪を遊ばせながら煙管をふかす、その姿はだらしなくも見えるが、彼女のそれは美しく艶やかである。 「侑子先生またそんな格好でゴロ寝してたらお腹冷やしますよ!」 何故かお母さんみたいな口振りの四月一日を無視して、侑子先生もとい理事長は黒鋼に煙管を向ける。 「こんにちわ、迷子の黒鋼センセ」 悪戯が成功した時の子供を数十倍たちが悪くした顔で侑子は微笑んでいた。 「…てめぇ…喧嘩売りに呼び出したんじゃねぇだろうな…。」 全くもって目上の人物に対する語句を一切使わずに黒鋼は侑子を睨み付けた。 「まぁ、怖い」 「……」 人一人平気で殺せそうな視線を真っ向から浴びながら侑子は上体を起こした。
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