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現れたのは、黒のシルクハットを被った、ハタチほどの男であった。
この場所は、入りくんだ道を通って来ねばならない。
そのため、偶然辿り着いたということはまずないのである。
男がやって来たことに、富豪たちは互いに顔を見合わせ、驚いた。
その中の一人が言う。
「ここに何の用がある?」
「お前に用はない。
用があるのは、あの女だ。」
男はそう言うと、奥の席でケーキを食べているシェーンを指差した。
シェーンも富豪同様、男に気付いていたはずなのだが、驚きもせず、ただ黙々とショートケーキを食べていた。
最後に残しておいたイチゴを食べ、シェーンは口を開いた。
「私に何の用?
お金なら貸さないわよ。」
「勝負だ。」
予想外の男の答えに、シェーンは思わず「えっ?」と声を漏らした。
男は続けて言う。
「俺はあんたと勝負をしに来た。
勝負と言っても、ここのゲームのことだがな。」
「ゲームがしたいのね。
OK、いいわよ。」
シェーンは一瞬戸惑いこそしたが、ただのギャンブラーとなれば話は早い。
二人はゲームテーブルへと向かった…。
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