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電車に乗り、二駅過ぎたところで降りた。
家から大学は近い。晴れた日なら自転車で通うのも悪くないだろう。あいにく今日みたいなどんよりとした天気の日は、何十分も自転車をこぐ気にはなれないものだ。
純也「あ~あ。俺らもついに大学生か。長かったなぁ実!」
実「日本のトップレベルの難関校なんだ。一浪で入れただけでも十分だろう。もっとも、純也は裏口入学だろう?」
純也「まぁな~。ここの理事長さんは親父の知り合いだから、それもありだったんだろうけど。やっぱ自力で受かるのって気持ちいいよな!」
浪人時代、勉強が嫌になった純也が一人でハワイに飛んだのを思い出した。夜中に泣きながら電話してきて、俺はビキニが見たいんだ!って言って次の日の朝純也はハワイに飛んだ。純也んちは金持ちなんだ。俺は馬鹿だといって見送ったが純也は19歳としては健全な願望だと主張していたっけな。
そんなくだらない思い出話をしながら歩いていると、大学が見えてきた。
二人「…すっげぇ。」
青々しい並木が続き、その奥には風情のある校舎が僕らを待ち構えていたかのように堂々とそこに建っていた。僕らと同じ、新入生であろう学生たちが正門に続くその並木に吸い込まれるかのように次々と歩いていく。
純也「さて…俺らもいきますか、いざ憧れの大学へ。」
純也はまたおどけて言った。
並木の間を歩く途中、静かに風が吹いた。
僕はふと、振り返る。
そのとき、
「彼女」と目があった。
美しいという言葉がこれほどにも似合う女性はいるのだろうかと僕は思った。
黒く光沢のある長い髪とは正反対に、透き通るような白い肌、それに、あの瞳。
僕は目が離せなくなっていた。
「彼女」が上を見上げる。
つられて僕も上を見上げた。
そこにはさっきまでとは違う、「彼女」の肌のように透き通った青い色をした空があった。
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