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空に流れる天の川は途切れる事を知らないように遠くまで続いている。
「女はこんな事が好きなんだろ?」
「あっ…変ですか?」
「いや…**にはすっかり世話になってるからな、これは礼だ。
危ねえから一人で出歩かせれねえしな……。」
同じように空を仰ぎながら静かに語る土方さんの横顔に思わず見とれてしまう。
「**…。」
名前を呼ばれたかと思うとその刹那私の唇に土方さんの唇が重なっていた。
「っ…?!」
触れる程の軽い口づけ。
土方さんはゆっくりと私から離れた。
「ひっ土方さん……?」
私は口元を手で覆いながら驚きを隠せないでいた。
「嫌だったか?」
屯所では見せる事のない穏やかで優しげな表情。
それを見ただけで私の胸は高鳴ってしまう。
「土方さん……ずるいです……。」
私の気持ちを知っていての行動なのか…
はたまたからかわれているだけなのか…
訳が分からなくなって思わず涙が溢れた。
「私…土方さんの事が好きです………。」
ポロポロ涙を溢しながら想いを告げてしまった。
本当はそんなつもりは無かったのに、気付いた時にはもう遅かった。
「悪い…言葉にしねえと伝わらねえよな……。
**…お前が好きだ。」
ぎゅっと私を抱き締めながら耳元でそっと囁いた土方さんの言葉。
夢なんじゃないかと思うぐらい幸せな言葉。
「土方…さん………嘘じゃありませんよね?」
「嘘ついてどうするんだよ?
俺は真剣だ…例え鬼が襲ってこようともお前を守り抜いてやるよ。」
抱き締められた状態でお互いが見つめ会う形になり、お互いの息がかかるぐらい近い距離。
「ずっと…土方さんの側にいても良いんですか?」
「ああ…むしろ隣にいてくれ。」
「はい……。」
私はさっきとは違い、嬉しくて涙を流しながら土方さんの首に手を回す。
そして今度は触れる程の軽い口づけではなく、長い口づけを天の川の織姫と彦星に見守られながら交わして静かに流れる時間をお互いの気持ちを確かめる様に過ごしていた。
胸元に仕舞っていた短冊に書いた細やかな願い事。
土方さんをずっと見つめていたい………
【終】
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