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なりゆきで新撰組に居着く形になってしまった私だったが、いつの間にか土方さんの事ばかり考えるようになっていた。
私はきっと土方さんの事が好きなんだ…叶わないと分かっていても密かに想いを寄せていた私は塞きが切れたかの様に一人声をころしながらないてた…
「**?こんな所でなにやってる?」
「えっ?」
声に気づいて慌てて顔を上げると、そこには土方さんの姿があった。
私は慌てて袖で涙を拭う。
「ひっ土方さんこそ…こんな所でどうしたんですか?」
「俺がここに居ちゃいけねぇのか?
**…お前泣いて……。」
「ちっ違います!
気にしないでください!!ちょっと目にゴミが入ってしまって………」
私は慌てて泣いていたことを誤魔化す。
誤魔化す事に必死になっていた私は、膝の上に置いてあった本に気付いた土方さんに何の前触れもなく、あっさり本を上げられてしまった。
「あっ…。」
「**にこんな趣味があったとは驚きだな…誰か想い人でもいるのか?」
開いていたページの和歌を読んだらしい土方さんは、からかっているのか口元に笑みを浮かべているような気がした。
「そんなことありません。」
フイッと顔を反らしながら私の口から飛び出した言葉は思っている事とは全く違った言葉。
胸が痛むのを感じたが、何事もなかったかの様に振る舞う。
「えっ…?」
いきなり反らしていた顎をクイッと持ち上げられ、その刹那、唇に何かが触れたのを感じた。
私が状況を把握するのに時間がかかった。
今、自分は土方さんと唇を重ねている…
突然の出来事に身体が固まったまま動かない。
土方さんが私からゆっくり離れる。
「土方さん…冗談は辞めてください……。」
こんな都合の良い話ある訳がない…
喜びと疑惑の感情が入り交じった複雑な心境で私は土方さんに言葉を投げ掛けた。
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