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「君さ、何で俺が好きなわけ?」
ほとんど話したこともないのに、と俺は言った。俺から話し掛けられるのがかなり意外だったのか、彼女は少し驚いた顔をした。そして話し出した。俺は全く覚えていないのだが、彼女は俺と高校一年の時も二年の時もクラスが同じだったらしい。その時の俺は今みたいに女の人を避けているわけでも無かった。むしろ男女混ざったわりと大人数のグループの中に居た。その中に彼女も居たらしい。そして俺を好きになったらしい。だけどその時既に俺には彼女が居た。その後俺の彼女は死んでしまった。その事は皆が知っているわけで。俺はもの凄く沈んだし、グループからも抜けてしまった。彼女はそんな俺を見て、告白できなかったらしい。本当はずっと告白するつもりは無かったらしい。だけど、いつまでも立ち直れない俺を見て、支えてあげたくなった、と彼女は言った。そして彼女はこう言い残して去って行った。
「私じゃ、貴方を悲しみから救えないの?」
それからというもの、彼女は俺と会っても何も言わずに立ち去ってしまうようになった。そのまま放っておけばいい。そう思ったが、いつの間にか彼女を目で追ってしまう自分がいた。俺はこの感情を殺そうとした。だけど、殺そうとすればする程その感情は大きくなっていった。自分の気持ちを否定し、押し殺し、数日が過ぎた。ある日学校の廊下で彼女を見た。男と一緒だった。俺は少し裏切られたような気持ちになった。そしてその場を立ち去ろうとしたが、彼女の表情を見て、俺は気付いた。彼女は男に絡まれているのだ。次の瞬間、俺は男と彼女の間に割って入っていた。男は俺を睨んで威嚇したが、俺が引かないので男は悪態をつきながら立ち去った。彼女が俺に何か言おうと顔を上げた時、俺は彼女を抱き締めていた。
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