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「それにしても……言わせておけばなかなか勝手な言い分だな。俺は言い掛かりで叩いたこともないし、叩くのは過去形じゃないんだけどな」
ニヤリとした笑みと共に葉山が発した言葉に、坂月は顔を真っ赤にする。八城は楽しそうに目を輝かせた。
「寝る前にジュース飲むなって言ったのに沢山飲んでおねしょをしたり、俺のCD割ったの隠したり……昨日だって、ピーマン食べないって駄々こねるから座れなくなるまで叩かれたばかり」
「にいさん!」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら坂月の恥態を語る葉山に耐え切れなくなったのか、坂月は顔を真っ赤にして叫ぶ。
それに葉山は目を細めた。
「ペナルティー2。またにいさんって言ったな」
「っ……」
今度は顔を青くする坂月に、ペナルティー一つにつき一体何回尻を叩かれるのだろうかと八城は思う。
それを想像するのは、とても楽しいことだった。
「……僕は、もう帰ります」
それ以上話を聞くのが嫌だったのか、坂月はくるりと踵を返し、早足で教室に向かってしまった。
その場に残されたのは、八城と葉山の二人きり。
「……なんでセンセーは、坂月のお尻いっぱい叩くんだ?」
「さあ、なんでだろうな」
ニヤニヤと笑う葉山の表情からは、何かを読み取ることは出来ない。
八城は小さくため息をついた。
「もしかして忘れ物とかの懲罰って、本当は坂月のお尻叩くのが目的なのか」
「んー、ご名答」
八城の疑問はここで解けた。
級長が負う連帯責任。
罰則を受ける者よりも厳しい級長への罰。
罰則はおまけで、級長の尻を叩くのが本来の目的ならば、説明がついた。
「それって、公私混同ってやつだと思うんだけど。いけないんだー」
「何言ってんだ、それで実際遅刻も忘れ物も減ってるんだ、問題ないだろう」
あまり頭がよろしくない八城はその言葉にそうかな、と首を傾げる。だが、葉山がそうだというのならばそうなのだろうと、納得してしまった。
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