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「愛する人を殺すとでもあいつに脅されたのかよ」
「……………」
今は、氷龍に水鶏の事を殺すと脅された事など言う必要はない、だから黙っていた
「ちょっと待って……冗談で言ったのに………まさか……そんなに大切なのかよ!まだそんなに愛してるのか?」
「愛している……永遠にね」
「あははっ、馬鹿らしい」
「水鶏」
「いくら愛していても孔雀はもう俺達の仲間だと言う事を忘れるな」
「わかっているさ」
わかっている
わかっている
だけどわかりたくない
「そんな奴の事は早く忘れるんだね」
「忘れる事は出来ない」
「孔雀!」
「水鶏?」
突然立ち上がり抱き着いて来た水鶏に動揺が隠せない
「忘れてよ……そして俺を見てよ……ずっと好きだったんだ…ずっとずっと今でも好き」
「僕にとって水鶏はいいパートナーであり友達だよ」
「嫌だ!もう会えない奴の事なんか忘れてよ……そして俺を見て」
「水鶏」
泣いている?
絶対泣く事などなかった水鶏が肩を震わせて泣いていた
しがみついた僕の背中に涙が染み込むのがわかる
「孔雀……お願い…俺を愛して……」
「………水鶏」
動けないまま時間だけが過ぎて行く
確かに仲間を裏切った僕を鷺は許してはくれないだろう
だったら水鶏を愛せば少しは楽になれる?
(鷺を護れよ)
ふと、翔の言葉が脳裏をかすめた
そしてその時、漸く翔の言葉の意味が理解出来た
僕は鷺を護る為に生きていけばいい
例えもう会えないとしても、僕が愛しているのは鷺なんだ
「ごめん……ちょっと疲れたから休むよ」
「やっぱり、うんとは言わないんだね」
「言わないよ……僕が愛しているのは彼だけだから」
「だけど、孔雀は絶対俺を愛するようになる」
「ならない」
「今はね……でも先の事なんかわからない」
「………水鶏も少し休んだ方がいい……じゃ、また後で」
そっと手をほどき、
振り向かずに部屋に戻った
危なく流されてしまう所だった
翔にはこの場面も見えていたのだろうか?
だから僕にあんな事を?
「助かったよ、翔」
危うく自分を見失う所だった
二度と会えないと決め付けるのもおかしいよね
翔にもし見えていたとすればもしかして……
「鷺………」
ほんのささやかな望みだけど僕はまた鷺と会える事を願うよ
翔、それでいいんだよね?
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