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咲き乱れる鷺草の中に佇みポツリと呟いた
『鷺草の花言葉は確か……夢でも会いたい……か』
だけど夢じゃダメなんだ
鷺には孔雀が必要で孔雀には鷺が必要
だけど鷺は何も言わずにただ、我慢している
『そろそろかな』
鷺草を踏まないようにそっとその場を立ち去った
その翔の姿をリビングの窓からじっと見ていた
多分、そろそろ翔が動き出すような俺の勘が当たったらしい
「今回は内緒は無しですよ……」
「ん?和海、何か言ったか?」
やはり冬矢には聞こえてしまったらしい
「いえ、何も」
「何も……ね」
「ちょっと出掛けて来ます」
「正確には翔とだろ?」
「クスッ」
双子と言うのはこういう時に便利だと少し笑えた
「気をつけろよ」
「はい」
翔が屋敷を出る前に捕まえなくては……
「翔様」
廊下に出ると、ちょうど翔が碧月の部屋から出て来た
『何?』
「わかってるくせに」
『だろうね……んじゃ、行こう』
「はい、しかし何故碧月の部屋へ?」
『それはすぐにわかるよ』
「わかりました」
翔はポケットに何かを入れて玄関に向かって歩き出した
屋敷を出て車に乗り、翔の案内で寂れた繁華街にやって来た
『和海、もうすぐあの店から出て来る奴を捕まえて』
「どうやって捕まえましょうか?」
一応聞いておこう
『もちろん気絶コース』
「わかりました」
翔には幻蝶が孔雀の居場所を捜す前から関わっている奴がわかっていたのだろうか?
『あっ、あいつだ』
「はい」
車でそっと後を追い、
人気のない道で気絶させてトランクに詰め込んだ
『クスッ、トランクとか笑える』
「この車の中には入れたくありません」
『何で?』
「何でもです」
『そか』
理由は一つしかない事を翔も気付いたみたいだ
『この車に俺以外乗せたくないなら違う車にすればよかったのに』
「うっかりしていました」
『ごめんね』
「いえ、トランクには荷物しか入っていませんので」
『だね』
二人で笑いながら翔のリクエストでほとんど使わない山中の別荘を目指した
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