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別荘に着いたのは夜の8時過ぎだった
取りあえずトランクの中の荷物を部屋に運び、手足をベットにくくりつけリビングに向かった
『お腹空いたね』
「ではちょっと遅い夕食にしましょう」
『うん』
別荘に来る途中で購入したお弁当を皿に移し替え、温めてテーブルの上に置いた
『普通のコンビニ弁当もこうやって出て来ると豪華だね』
「味までは保証出来ませんが」
『大丈夫、めちゃお腹空いてるから』
「よかったです」
久しぶりに二人でゆっくり食事を楽しんだ
たまには静か過ぎるのもいい
聞こえて来るのは時折風が揺らす笹の音
そして食事が終わる頃に
叫び声が聞こえて来た
『やっとお目覚めらしい』
「ですね」
『じゃ、荷物に孔雀の居場所を吐いてもらうかな』
「しかし簡単には」
『人間てのはさ、死を直感すると脆くなる』
「死……ですか」
『大丈夫だよ、殺したりしないから』
「翔様」
翔がまた惨殺魔になるのではないかと一瞬戸惑ったのがわかったのか、そっと背中から腕を回し俺を抱きしめた
『大丈夫だよ、心配しないで』
「はい」
確かに生きる価値もないような奴かも知れないが
やはりもう翔の手を汚したくはない
それがわかっていたのか、翔は自分が落ち着いている事を俺にわからせる為に心臓の音を聞かせるように優しく抱きしめた
『ねっ?大丈夫』
「はい」
『行こう』
そう言って翔は叫び声のする部屋へ向かった
ドアを開けると、意味がわからないと言った顔をしながら俺達を見つめた
「な、何なんだお前達は」
手足の自由を奪われただけでかなり怯えている
『ちょっとね、あんたに話を聞きたいと思って』
「話?」
『そっ、水鶏のね』
「………水鶏」
その名前を聞いた途端、顔色が変わった
「知らない、そんな奴は知らない」
『ホントに?』
「ああ」
『じゃ、その右手に聞いてみる』
翔はポケットからニードルを取り出した
成る程、だから碧月の部屋から……
確かに最近ピアスを開ける為に碧月が購入していたのを思い出した
しかし何故そんな物を?
俺はただ黙って翔を見つめていた
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