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『椿は実の姉に殺されたんだ』
「えっ?」
『恋愛は必ずしもうまく行くとは限らないし難しい……運命のいたずらにしては残酷……だけど椿と姉を引き合わせたのも運命かもね……そして姉も屋敷に住む事に』
「能力者?」
『いや、全く』
「そうなんだ」
『椿を愛していた氷龍を愛してしまったのは姉……皮肉だよね…愛する人は実の弟を愛していたなんて』
「………………」
『恋とは時に残酷……愛する気持ちが殺意に変わる』
「殺意……」
『氷龍が弟を愛している事を知った姉はあらゆる手段を使い椿を殺そうとした……氷龍はそれに気付いたけど、何も知らない椿を悲しませないように姉を殺さなかった……』
「椿の為に?」
『うん……だから運命は残酷なんだ………椿の為だと思ってやった事が裏目に出てしまった』
「裏目?」
『もし、何も考えずいつものように姉を殺していたら椿は死なずに済んだ……それもまた皮肉だね』
「椿の為に生かしておいた姉が弟を……」
『もうその時から狂っていたんだね……全ての歯車が』
「その姉は?」
『愛する人が殺されたんだよ?生かしておく理由がどこにある?』
「………確かに」
『氷龍はあの庭の椿に殺された愛する人の幻影を見ていた』
「でも庭の椿は」
『そしてまた心を閉ざした氷龍の前に春が現れた……これもまた皮肉な巡り会わせでね……』
「皮肉な?」
『うん……氷龍の前に初めて現れた時、春は記憶を無くし光も無くしていた』
「記憶と光……何故?」
『親達が残酷に殺されたのを見てしまったから記憶と共に深い闇の中に……そして氷龍と出会った……面影が椿に似ていた春を愛する事に時間はかからなかった』
「春も?」
『春も氷龍を愛した……そのまま春が何も思い出さなければ今あそこに居る椿はいないはずだったのに』
「記憶が何か?」
『その時、一緒に住んでいたのが水鶏……その水鶏が春の記憶を戻してしまった……そして気付いた』
「何を?」
『親達を殺した奴の顔を』
「それって……まさか」
そんな最悪な事が本当に……?
鯉にパンをあげている椿を見つめながら思わず溜息をついてしまった
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